【オリエンテーリング】やった仕事全部書く〜第5回神大大会ができるまで〜

オリエンテーリング

プロローグ

 大会運営って大変…でも大会運営してみたいな…そう思っている貴方に朗報です!この記事を読めば大会が完成するまでにする全部の仕事がだいたい分かります。やってみたい仕事を見つけてLet’s大会運営!

 と、言った手前下手な事は書けないのですが、今回は3月22日に兵庫県宍粟市で開催した「第5回神大大会」ができるまで、横江がやった仕事について忘備録を書いていこうと思います。

 安心してください。計セン以外の全部の仕事は自分がやったのでこの記事を読めば計セン以外の役職の流れは掴めるはず。概ね時系列ですが役職ごとに飛んだりします。

 今更、自分の役職で何やるかなんて聞けないよ…という方にも読んでほしいかな。

はじめに

大会の目指すコンセプト

 昨今、いろいろなオリエンテーリングが発明されていますよね。ではこの大会で目指すのは何か、それは「オリエンテーリング」が楽しいオリエンテーリングです。

 進次郎構文やめろと言われそうですが、本当に文字通りそのまま。オリエンテーリングという競技そのものの魅力、ナビゲーションや爽快な森、複雑怪奇な地形など、本質的に近い意味でオリエンテーリングという競技が楽しいことを目標とします。

 独創的なキャラもいないし、美味しいキッチンカーがあるわけでもない。でもオリエンテーリングの原義的な楽しさを体感できる大会を目指すということです。

事前の準備

テレイン渉外

仕事の時系列

 まず、このテレインは神大OLKが新歓合宿の宿を探していた時にごく偶然発見されました。23年のOLP50周年記念大会にてお披露目された「ちくさ高原」を使う予定だったため宍粟市近辺で宿泊に適した場所を探していました。

 その際、偶然白羽の矢が立つこととなった「フォレストステーション波賀 コテージ村」。この近辺の森の地形が存外良さげでGoogle Mapのストリートビューを見てもオリエンできそうな雰囲気がするぞ?となったのでした。

 初動の渉外で訪れたのは4月5日、ここは実行委員長が電話でアポを取りましたが対応してくださった方にオリエンテーリングの概要をお話すると「どうぞ好きにしてください〜」と非常に好意的なお返事を。

 森に入る許可を取ったそのままの流れでテレインの下見に入るとこれがまた良い森。神戸近辺の森は瀬戸内海が近い都合上どうしても低木が多くなりがちでクソ薮なのですが、かつて林業で栄えたこの宍粟の森は一味違う!圧倒的な白い森の存在に驚愕しつつもテレイン化の希望を見出したのでした。

 以降はひたすらメールでのやり取り。森には好きに入って良いと言われていましたが林業をやっているのかいないのか、状況はどうかということが読めなかったので必ず毎回入る前にメールを送信していました。

 6月に入り合宿も終わると自分が1ヶ月間海外遠征で離れてしまうという事情、そして実行委員長の催促もあり、その前に大会を開催したい旨の話を直接お話しして切り出すことに。これまではとりあえずオリエンテーリングの合宿をしたい、そのための地図を作るという段階でしかありませんでした。

 要項1を作成し必要な情報を載せいざ丁寧に説明すると多少の心配(主に開催時期、当初は2月末の予定だった)はされつつも快諾していただけました。トレランの大会も開いていたりするから似たような感じなら問題ないと。

 8月、阪神奈大会等との調整で2月24日に開催するという旨のメールを送ると、積雪により開催できない可能性が高いとのお返事があり10月に改めて3月22日を大会の開催日にすると決定。対面での打ち合わせにて3月末であれば余程のことがない限りは積雪していないだろうとのことで承諾していただき要項2を発行しました。

 その後は調査も進み12月中ば、積雪が始まる前に再度打ち合わせ。積雪がある期間は調査ができない(実際はしていた)ためこれをほぼ最終の打ち合わせとするつもりで要項にプログラムレベルの情報を付与して共有。

 当日に備品や施設を拝借する以外は全てこちらで準備するという見解で一致しあとは簡単なメールのやり取りで大会当日を迎えることとなりました。

やった仕事内容

  • 初期渉外(オリエンテーリングの認知)
  • 大会渉外(大会開催の打診)
  • 現地渉外(定期の打ち合わせ、当日の動き等)

 最も責任重大な仕事と言っても過言ではないのが「渉外」です。これをしなければそもそも大会どころかオリエンテーリングという競技を行うことすら叶いません。

 渉外全般のコツとして起用する人間は「人あたりの良い人間」である必要があります。特に初対面時の印象というのは強く残りやすいもの。加えて会う回数が少ないとなればそのぶん影響は大きくなります。

 名大の某Nが「可愛い女子にやってもらうと良いよ!」とか言ってた気がしますが、現実的な話をすればあながち間違いではない。自分は残念ながら女の子にこそなれはしませんが人あたりは良い方なので、少なくとも初回の渉外くらいは役職問わずそういうヤツを連れて行くべきでしょう。

 あのTwitterで人当たりがとかおまいう案件。でもね、人って多面体なんですよ(笑)

 また、今回のテレイン開発にあたってはテレインの開発(初期渉外)と大会の開催(大会渉外)とを明確に分けました。本来であれば大会を開催するという前提のもとに動くのでその必要はないのですが、クラブのリソースを鑑みて大会を開催せず打ち切るという予防線を張ってのことでした。

 渉外がうまくいきさえすればあとは定期的な顔合わせと当日の施設や備品使用について連絡や断りを入れる等の事務方となります。渉外で最も力を入れるべきは間違いなく「初動」でしょう。

地図作成(前期調査:4〜6月)

 テレインの渉外が成功し合宿を開催することが決まった4月、自分に課されたのはとてつもないミッションでした。それは「6月中旬の新歓合宿までに最低限オリエンできる地図を作る」というもの。今考えてみれば頭おかしい。

 何しろこの時点で自分はスプリントマップこそ描けれど森の調査なんかしたこと一度もないまさに「ど素人」の状態。しかもただの大学生。常識的に考えれば「絶対無理」と言える状態でした。

 だがしかし、無理というから無理なんだ。気合いを入れろ、やってやるぞと半ばキレ気味に奮い立った自分は週2という異次元のペースで片道100kmの下道運転で調査と作図を進めることとなりました。

 頼みの綱のりょうすけさんもM1前期という事もあり授業やらゼミやらでまともに動けず。結局O-ringen参加のために前期に授業が1コマしか無かった自分が大部分の調査を行うこととなりました。

 幸いなことに兵庫県は0.5mメッシュのDEMデータをフリーで取得できたのでOCADに直接インポート。あとは最低限必要な道路構成線や水岸線などを取得し調査に挑みます。しかしそんな初心者マッパーを鉄穴残丘特有の人工微地形が阻みます。

 とにかくやってみないことには仕方がないので調査しては作図し、作図しては調査しの繰り返し。時たま時間が空いた時にりょうすけさんとGPSを投入し道やちょっとした作図をして貰いましたが13回中10回のソロ調査。この時期が調査で一番大変だった…

 そして2ヶ月間の調査を終えて合宿に供した地図がこちら。完成版の地図と比べると荒いところや地図の表現が洗練されていない箇所も多く到底良い地図とは言えませんが「最低限オリエンテーリングができる」くらいの条件は満たした地図が出来上がりました。

 だんだんと日を追うごとに繁茂する薮に苦戦しながらもなんとかそれなりの地図を描き終え合宿。まあ、みんなとりあえず文句も言わずに走ってくれてありがとう。ほんま、ありがとう。

やった仕事内容

  • 調査(植生・地形・特徴物)
  • 作図(コンタバリ取り・0点打ち)

 調査にもいろいろなスタイルがあるそうですが、自分は初めからOCADのスケッチ機能を使用しました。OCADから直接お絵描きできる下絵を出力してiPad等で書き込みそのデータを改めてOCADにインポートするというもの。これが一番楽だと思います。

 DEMデータの力で地図に描くべきコンタの裏に薄く1mコンタを透かすことで実際の地形の位置から大幅にズレることのないよう注意して作図を行いました。コンタをいじっていくとあまりにも別位置に移動しているというのはよくある話。

 特にこの時期に悩んだのはこういったササの繁茂した植生。もちろんA薮で描けないのは当然ですが、これをB薮として描くのかBハッチとして書くのか悩みの種でした。

 ヤブ内部の視認性(見通し)という点で考えるとハッチで描くのが妥当なのですが、ハッチで描くと問題となるのは地図表記としての薮の視認性がかなり落ちてしまうということでした。この板挟みに悩まされひとまずは通常の薮表記で耐えることとなります。

 他にはご覧のような微地形。神大大会ではフィニッシュ周辺のコントロールが置きまくられてたエリアとして使われていましたが、いきなりこの微地形の調査に突入したものであの手この手で作図をし直しましたがついぞ終わることはありませんでした。

 本当に最低限の高低差と特徴物だけ取ってしまって合宿に供されました。まあ、なんとか誰からも文句は言われませんでしたが正直全く何描いているか分かりませんでした。

地図作成(中期調査:10〜12月)

 海外から帰還してはや2ヶ月。夏季休暇中は大会も多く何より暑すぎて調査なんてできたもんじゃないということで8月・9月はほぼ全く調査の進捗がありませんでした。

 もちろん、不快でやりたくないという理由もそうでしたが何より一人で調査する上で有害な蟲、主にスズメバチに襲われるリスクは計り知れないものがあるので、そういう観点でも調査は控えていたのでした。

 10月になるとようやくまともに調査できる環境になってきたので前期の調査である程度形になった南のエリアは置いておいて線路・主要道よりも東側のエリアを調査し始めました。このエリアの方が前期調査のエリアよりも比較的傾斜が緩やかな事と地形的な面白さがあると下見の時点で判断していたため調査が急がれました。

 週に1回、あるいはりょうすけさんを投入して週に2回のペースでゾンビアタック調査。しかし調査はいきなり行き詰まることとなりました。それは大規模な礫地の存在。そう、皆様も神大大会の序盤で走ったエリアには無視するにはあまりに大きい礫地エリアが点在していました。

 下見の際にある程度の礫地の存在は把握こそしていましたがエリアも走行可能度も想定していた以上に状況は悪く、走らせられないことはないがかなり無茶をしないといけないということが判明したのです。

 大規模に礫地が存在するからと言って今更大会を中止すると言うのも、やると言って半分調査している以上難しい。何より中止するにはお金と労力をかけすぎていました。

 そんな状況で活路を見出したのがテレイン南端の片斜面のエリア。地理院地図で見るからに急なため使うことを諦めていたのですが藁にもすがる思いで入ってみると案外走りやすくて気持ちがいい。急な傾斜はプランニングの腕でなんとかするとして、こうして調査範囲が増加することとなったのです。

 調査範囲が増えてもリソースが増えるわけではないのが辛いところとにかく調査に行っては作図するを繰り返し徐々に地図に特徴物が書き込まれていきました。

 中期の序盤はりょうすけさんを過去のエリアのGPSによる補正に飛ばしていたので進捗は遅々としたものでしたが、着実なものでもありました。

 10月11月と調査を続けまともな試走もようやく行いそのフィードバックを受けつつ可能な限り雪が降る前に終わらせようと調査のペースを加速させました。

  なんといっても年度末の23日や25日にも地図調査をやっていたのですからオリエンティアの鑑と言って差し支えのない働きだったという自負があります。

 そんな中ついにその日がやってきました。12月23日、この冬最初の寒波がやってきたのです。波賀は兵庫県の北の方なので冬場にはがっつり雪が積もります。もう少し北に位置するハチ高原は関西有数のスキー場です。

 この日の積雪は10〜20cm程度。久しぶりに触れる雪の感触に喜びつつも足元を取られる上に非常に冷たい。これはこれからの調査大変だぞと覚悟を決めざるを得ないのでした。

やった仕事内容

  • 調査(植生・地形・特徴物)
  • 作図(コンタ強調・地形修正)

 作図にも慣れてきてOCADの扱いもショートカットを使ってサクサクできるようになってきたのがこの頃。同様にスケッチも素早く使えるようになり様々な色や描き方を駆使して白図に色付けをしていきます。

 特にDEMデータの恩恵を存分に活かして5mコンタでは正置に時間がかかるところ1mのコンタを透かすことで現在地の特定と微細な地形の修正を容易にすることができました。

 また、諸般の事情で使えなくなっていたVMM(Vector Map Maker)のせいで一向に取得できなかったDXFファイルを入手し、それまで地形とGPSを用いて仮置きしていた道路や建物、水域面を国土地理院による測量ベースのものにアップデート。

 おかげで路側帯などで道幅が広がっているところや大きな舗装区域の情報が正確になりアタックやナビゲーションに使った際も違和感がなくなりました。

 また、机上でのコンタ線の操作として尾根と沢の強調を行いました。地図図式(ISOM2017)上で定められている25%の上限を超えない範囲で尾根と沢のコンタ線を意図的にずらしました。

 細かなところですがこれがあるのとないのとでかなり変わってきます。特にパッと見た時の尾根沢の切り替えがくっきり強調されるので判読性を上げるという意味で無理ない範囲で実施すると良いと思います。

 この時期に地図を描く上で悩んだのは造成道脇の崖の表現です。ご覧のような土の露出した斜面が南西の山塊に造られた造成道一帯に散在していました。

 まずこの崖を土がけ(104)記号で表記するのか、あるいは通行不能ながけ(201)で表記するのかというところで悩む事となります。ご覧の崖は高さ2mに満たないですが、同じくらいの高さのものから最大で6〜7mに達するものまで様々です。

 ISOM2017日本語訳版を参照すると土の崖でも通過/登降が不可能なものは201記号で表記するという定義があります。この通過が可能かどうかという表現が曖昧で曲者です。

 極端な話をしましょう。自分を基準に合わせれば3m程度の崖であれば全身を使って登ることが可能、降りる時も飛び降りれば差し支えありません。一方でジュニアや女性の選手であれば同じ高さを登り降りすることは不可能に近い、そんな状況です。

 悩みに悩んだ末、2mというのを基準に下回る場合は104、上回る場合は201で表現する事としました。優先事項として高さが2mを下回っていても物理的に登るのが困難、危険な岩が露出してるとか体を保持できないとかの場合は同じく201にする事としました。

 これでひとまず造成道脇の崖の処遇についてはなんとかなったように思えましたが、また新たな問題が出現しました。それは造成道エリアの判読製についてです。

 具体的には造成道の504記号と201記号が並行しているとぱっと見でどちらが道なのか非常にわかりにくいということ。特に描画スペースの問題で記号の単線を道に接触させざるを得ない事から地図のぱっと見の圧迫感も増加します(黒色は他と比べて視野に強い影響を与える)。

 これを解決するために2023年のOLP50周年記念大会の地図(ちくさ高原)では504記号に隣接する201記号に関しては単線を全て省略するという形を取り判読性を保っていました。

 岩崖に単線を描かないというのは海外では一般的なようでイタリアのCansiglioで参加した大会は日本のどこよりも岩がちな地形で201記号も多数使用されていますがその大部分で単線がありません。これで高低差がわかる海外ティアがすごい。

 特に波賀は地形的特徴が明瞭なので単線を必ずしも表記しなくとも崖の上下を判別できることからちくさと同様で良いというのが自分の意見でしたが、最終的には他の日本の地図にフォーマットを寄せるという意味で通常通りの表記となったのでした。

地図作成(後期調査:1〜3月)

 年始早々、積雪の中地図調査に入ります。自宅の車は山間の仕事場にも行くことがある関係でスタッドレスに毎冬換装していたことが幸いし急な積雪路も問題なく走破できました。おまけに4WDだってんだから感謝です。

 フォレストステーション波賀はすぐ東にある東山という山の登山基地となっているのでこんな感じで柴犬が時々やってきます。小さい御御足でちょこちょこ歩いてるのガチで可愛い。

 とはいえ雪の降り積もる中調査をするというのはなかなか用意なものでなく、普段のオリエンの格好で山に入ると3時間と持たずに凍えますし何よりも足が凍傷になります。

 靴下を分厚くしたり厚底のシューズを使用したりしましたが結局のところ長靴を履いてしまうのが正解だったみたいです。グリップ力は無いに等しいのでそこだけ注意。

 積雪は寒いだけでなく地表の特徴物の多くを覆い隠してしまいます。特に範囲が広く複雑な礫地の位置情報の取得は終ぞ間に合わず雪の上を歩き回って目測で取っていくこととなりました。

 一方で頑固なススキやシダの薮は積雪によって一気に破壊されみるみるうちにテレイン全体がBハッチ気味な状態からA薮へと変化。地図上も現地も白いだなんて、嬉しい一致ですね。

 その後も調査を重ね、前期の調査で入ったもののきちっと植生や特徴物が取れていなかったところを随時修正し少なくとも競技に耐え得るレベルまで地図を書き込んでいきました。

 地図を描いている間はずっと積雪が続き、吹き溜まりの多いところに至っては1m近く積もっている箇所もありました。踏み抜いて腰までハマっても脚が地面につかないなんてこともありました。

 そんなこんなで3月の頭まで調査は続き最後にEAの監査(致命的な問題がないか)を入れてめでたく大会に使用するための波賀の地図は完成となりました。

 調査に使用した日数は合計41日。そのほとんどが一人か二人での調査だったのでもっと人員を増やして調査すれば十分圧縮できる余地はあったでしょう。しかしこれが我々の限界でした。

やった仕事内容

  • 調査(植生・地形・特徴物)
  • 作図(コンタ修正)

 基本的にやることは変わらず森を歩き回りOCADスケッチに特徴物を書き込んでいくのみ。積雪が進み調査の足を阻んできますが数十回の調査を重ねたおかげでこの頃が一番順調に調査をできていました。

 特に調査が遅れがちだった線路の東側エリアは積雪が始まってからの調査で一気に仕上げました。かなりの広い範囲でしたがそこは高効率調査ができるようになったということで。

 特にこの線路と道路に囲まれたエリアは地形がなんとか整っていた程度で2ヶ月のゾンビアタックで植生と特徴物、コンタの調整まで漕ぎ着けました。

 大会の2分前枠で注意喚起があったエリア近辺が特に厄介で足元が礫地や倒木でおぼつかない中、積雪の影響まで受けてしまうのでとにかく大変。

 積雪で大変になるのはもちろん足場の悪さや特徴物が隠されてしまうという点も挙げられますがそれ以上に厄介だったのは「森の見た目が変わる」ということです。

 どういうこと?と思われるかも知れませんが、雪が倒木の上に乗って陰影がハッキリとするので普段の時期に気にならない倒木までもの凄く気になってくるのです。おかげでBハッチなのかCハッチなのか調査に行くたびに変わっていたりするという珍現象まで起きていました。

 

 男子の9番から10番に至るレッグが通過する二つのオープン湿地の詳細を描き上げたのもこの時期でした。オープン湿地なので調査あんまりしたくないなとサボっていたらいつの間にか積雪の時期となっていたのでした。

 雪と水でぐっちゃぐちゃの泥の中、ところどころ現れる礫地と薮の位置を特定してOCADスケッチに書き込む。なかなか骨の折れる作業でした。

 さらに、EAのマップアウトする可能性のある地図南端の沢を描画すべきという提言により急遽、地図調査に向かうことに。おおよそ1kmに渡る沢とその周辺の特徴物を片っ端から取っていきました。

 この沢がなかなか曲者でこのテレインの中にある全ての沢の中でもっとも岩がち、まあつまりゴリゴリのガチ沢というわけで登っていくだけで一苦労。下手に怪我したら帰ってこれません(笑) 

 幸いなことにこの日は積雪が全くなかった当たりの日だったのでとにかく歩いて歩いて歩いて、1日だけで調査から作図まで終わらせました。

 岩石群なのか礫地なのか、岩がけなのか土がけなのか、岩崖は通過可能かとかいろいろ考える悩ましいところもありましたがとりあえず全部一発で仕上げて納得の自己暗示をかけましたとさ。

テープ巻き

 さる2/5、試験期間の真っ最中に真っ白な波賀にやって来て一人テープ巻きを行いました。全部で約50あるポストを設置予定の場所全てに赤いスズランテープと大会実施と連絡先を載せたプラカードを設置しました。

 この日は吹雪で風が吹き付けるたびに木々から雪が尋常じゃ無い量落ちてきて命の危険を感じましたが、幾度もの調査で麻痺した危機感知能力はいけると判断し4時間かけて巻いてしまいました。

 駐車場に帰る頃には車のタイヤ付近には雪が少し吹き溜まっていて設置中に降っていた雪の量を暗示させます。ワイパーあげといて良かった。

 タイツ一枚で設置に行ったのですが、あまりに寒すぎてタイツの裾を開閉するジッパーが肌に凍りつくというあまり見たくない光景が目に飛び込んできます。車の暖房で温めて溶かしました。

コースプランニング・試走

 如何にコースプランするかについての苦悩はこちらの記事にて事細かに全て解説しているのでここでは省略します。

 特に試走はコース組において重要だと判断しませんでした。もちろん、各々のコースをほぼ初見さんの人が走ってくれると相応のフィードバックがあるでしょう。

 が、それ以上に我々マッパーは実に数十日間に渡ってテレイン内を歩き回っているのですから誰よりもその特徴を厳密に理解しているはずです。

第一回試走(11/23)

 ある程度地図が完成して来てそろそろ準備も整ってきたということで11/23に1回目の試走を行いました。当日使用した地図はこんな感じです。

 スタートの場所が移動した経緯として最初に1番コントロールがあるエリアとその先が秋口までシダがしっかり群生しており局所的に足場が悪いという状態がありました。

 マッパーはあまりにもこのテレインに慣れすぎていて全く気にならなかったのですが、初見で入った先輩方から概ね不評を頂いてしまったので変えざるを得なかったというわけです。

 この試走を踏まえて調整されたコースがこちら。諸般の事情で1番2番コントロールをお見せできません(未公開のエリア)が足場悪い部分をあえて回避するようなコース回しとなっています。

 一方で全体的なレッグは結構連続コンピのようになっていて面白みには欠けそう。このままのコースだと駄作と言われても仕方がないですね。

第二回試走(1/17)

 第一回の試走ではそこまで本番のコース組みは意識せず全体の流れをさらっと確認する印象でしたが、今回の試走ではガチガチにレースをさせるというイメージで試走に臨みました。

 外径でなくコンピの回しやレッグ線の角度までほぼほぼ本番仕様のコースはすでにこの時完成していました。当日は当然積雪があったのでまともに走ることはできませんでしたが、きっちりコントロールを周回して適格性を確認しました。

 想定ていたよりも落葉や積雪により良い意味で植生が変化しておりほぼ全域で高速で走行が可能な状態。このコースであれば35分の優勝設定でもおかしくないと確信を得ました。

 若年クラスや女子クラスに関しても珍しく他の神大生に練習がてら協力してもらいました。まあ、ガッツリ積雪だったので苦行だったかも知れません。ごめんなさい。

第三回試走(中止)

 以降も最終試走(三回目)を行う予定でしたが、残念ながら2月末と3月初めの寒波により尋常ではない積雪を確認したため急遽中止。調査を競技者が通るであろうルートに重点し行うことで試走の代わりとしました。

 マッパーが直接コースを組んだのでテレイン内の危険箇所等はほぼ全て把握されておりそれに競技者が直面する可能性はもとよりできるだけ減らせていたと思います。

地図・ゼッケン印刷

競技用地図

 今回競技で使用する地図を準備するにあたって人員にかかる負荷の削減(主に横江)と印刷発注のノウハウ獲得を目指して一部クラスに関しては競技地図の外注を行いました。

 具体的にはコースナンバーが「1、2、3-2、4、6、7」のクラスに関してはグラフィックに印刷を依頼しました。実際に入稿したのは私ではないのでこれ以上の詳細は分かりません。

created by Rinker
エプソン
¥79,683 (2025/10/16 16:01:11時点 Amazon調べ-詳細)

 他のクラスに関しては必要枚数が合計で40枚程度でしたので自宅のプリンターで印刷することとしました。最近よく聞かれるのですが自宅のプリンターはこれ、エプソンの市販されている型で一番いいやつです。なんでこんなのが家にあるのでしょうか。

 印刷に使用したのはいつものトマト、正確にいうとコクヨのインクジェットプリンタ用マット紙です。個人的に厚み0.15は分厚くて好きではないのですがオリエンでは一般的なのでこれにしました。

 うちのプリンター(EW-M973A3T)を使うメリットとしては

  • いつでも印刷できる(直前でも対応可能)
  • 印刷単価が安い(インク代を加味しても)
  • 発色が綺麗

 これらが挙げられます。一方デメリットとしては

  • 印刷に時間がかかる(一枚につき1〜2分程度)
  • 描画の明瞭度が低い
  • 緑や青がはっきりしない

 というような感じです。

 オリエンテーリングの地図印刷に関しては、OCADを弄ってかなり調整をしまくった(数十枚のトマトが消えた)のでまた別の記事に起こそうかな。本当に頑張ったので。

 兎にも角にも、少数の印刷で済むクラスと販売用の地図は全て自宅のプリンターで印刷しました。印刷に滲みも少なく個人的には地図の発色的にこちらの地図の方が好きです。

ゼッケン

 ゼッケンを用意する手間とお金が勿体無いので本当はなしで行きたかったのですが…万一何かあった時に詰んでしまうと困るのでカメラと一緒にきちんと用意することとしました。

 とある筋から情報を仕入れたインクジェット対応ゼッケンが滲みも少なく品質も良いということで500枚を17000円で購入しました。た、高い…高級品です。なんなら地図より全然高い説まであります。

 みんな大好きWordの差込印刷で必要な情報を自動で290人分印刷しました。まさか290人分手動で書き換えて印刷する人はいないと思いますが(身内にいた)もしいたら困るのでやり方がわからない人は「Word 差込印刷」で検索しましょう。

 290枚を印刷するのに1時間かからなかったので、データさえ貰えればこれで印刷業も余裕でできちゃいますね。というかデータは当然貰うからお仕事だけご依頼していただければやりますよ。連絡待ってます(笑)

備品

 今回の大会ではEカードを消しとばすことが目標だったのでもちろんSiカードを用いて競技を行いました。基本的なSi備品全般は良くしていただいているOLP兵庫からレンタルしました。ポール・ユニット・Siカード・スタートチャイマー、ここら辺全般です。

 Siカードの在庫は175枚あったので十分だろうと想定していたのですが、嬉しいことに想定を100人以上上回る参加者に来ていただけたので足りなくなり、京都府協会からSi8もレンタルしました。

 OLPから資材を借りる際、仕事が多すぎてパンクしかかった横江が借りるという連絡を忘れていたという事象が判明したり、京都府協会のSIをついこの間まで返送し忘れていたりとかなりギリギリのラインでしたが、ご厚意で何とかしていただけました。本当に申し訳ございませんでした。

Screenshot

 スズランテープは赤白含めてAmazonで購入。その他、急遽用意した大きなデジタル時計等のだいたいの備品は全部深い森の中から取り寄せたものです。何でも売ってるんですね本当に。

 救護に使う用品やテントは阪大の備品から拝借しました。その他一部のスズランテープとシーラー・デジタル時計も同じく阪大から拝借したものです。

 フラッグやオリエン関連の景品に関してはみんな大好きALL4Oから輸入しました。ALL4Oはラトビアに倉庫を持ってるオリエン専門の海外通販サイト。これまで多数の商品を輸入してますが不良品の対応も早く信頼して良いと思います。フラッグ折れてたと連絡したら1週間で代品が届きました。早すぎわろた。

 ミドルセレでフラッグの色が燻んでいて地面と同じに見えポストを発見するのに多分に時間がかかったという経験を踏まえ36個を輸入。ほぼ神大所有のフラッグを新品に入れ替える形となりました。

直前準備

 運の悪いことにひと月前の阪神奈大会と同様、直前にかなりの積雪がありました。EAがポストの確認に向かった際の報告で若干絶望感を抱きつつも晴れの天気予報を信じて大会を決行することとしました。

 テープを巻いていた箇所にアングルとユニットの受けを設置。あとは公式掲示板に必要な写真の撮影と時間がかかるかもしれない誘導テープとスタート枠の大まかな設置を済ませました。

 確かこの日は自分、りょうすけさん、ゆいちゃんの3人でやった気がします。

事前の準備、まとめ

 こーんな感じで全部の仕事を羅列するとこんな感じになるでしょうか。

  • 渉外
  • 調査
  • 試走・コースプラン
  • 印刷
  • 備品
  • 広報・要項・JOY
  • 直前準備

 ある参加者から「横江、過労で死ぬんじゃねって思ってたけど、当日運営者多くて安心した!」と言われました。が、実際のところ地図調査と計セン以外の準備は自分ひとりでやったので多くの方が思っている通りの仕事量だったと思います。

 大変ではありましたが人間追い詰められてみれば案外できたものです。何より自分がかくあるべきと思う姿の大会にするために注力することは大変でこそあれど、嫌なことではありませんでした。

 同じことをやろうとしている人がもしかしたらいるかもしれませんが、正直オススメはしません。でも、できないことではないです。必要なのは根性だと思います。

 もちろん、もっと仕事して欲しかったとかそんなことは少しも思っていません。これは自分が始めた物語なので、自分でやるのは当然ですから。

大会当日の仕事

コントロール設置

 自分の役職は競技責任者という扱いにはなっていますがご覧の通りの準備の経過なのでだいたいのことを把握しているのは僕くらい。どちらかというと役職全体の滞りないハンドリングが実体的な仕事内容でした。

 当日の現地入りは朝の8時ごろ。直前準備でコントロールの正確な位置設定は終わっているので該当する場所にユニットを正しくつけることが何より重要でした。

 ユニットの設置に関しては割り振った人にやってもらい、最終的にはEAの橋本父に全てダブルチェックしていただくという形で完遂しました。

スタート・フィニッシュ・会場設営

 設置組が出動している間にスタートとフィニッシュ・会場の設営を行います。だいたいの形は前日準備で終わらせておいたので特に滞ることもありませんでした。

 実際にスタート・フィニッシュで活動する人に具体的にどういう内容の仕事をするか指示して、あとは現地が問題ないか目で見て確認という感じ。

 まあ、運営者も同期ではなく歴戦のオリエンティアばかりなので指示と言う指示が必要だったかと言われれば要らないとも言えます。仕事を減らすならここら辺は端折って良いかもですね。

前走

 本来であればせめて男女最上位クラスの前走を行うべきだったのですが余分な人員と時間が取れずM21Aクラスのみを自分が前走することになりました。

 練りに練ってようやく完成した愛しのコースをぐるっと周回。正直なところやっぱ登りは厳しいっす、はい。それでもこのテレインの魅力を十分に活かすことができたコースだと思います。

 結果は43分半くらいでしたね。何で最速じゃないの〜?と言われそうですがあんまり寝てないので許してクレメンス状態です。

受付監視・補助

 出走が始まったらあとは何とかなることを祈るだけ。前走でフィニッシュユニットの設定が少し違っていたみたいで初動のレース結果がうまく読み取られないというハプニングがありましたが何とか計セン部隊とEAが解決してくれました。

できなかった仕事

計セン

 唯一と言っても良いできなかったお仕事、それがみんな大好き計センですね。

 というのもこれは技術的に難しい問題でして。うちのPCがMacなんですよね…残念ながら計センに必要なもの一式を準備できないというわけです。

 世の中にはMacの仮想環境上でWindowsを動かすという力技もあるにはあるらしい(広大の同期が実際にやってた)のですがそれには少しばかり課金が必要なので見送っているというわけです。

 実際、計センの業務はできない人が多いですが、逆にできる人は全く助力を必要としない場合が多いような気がしています。将来的にはできるようになりたいですが火急というわけでもないのでしばらくはノータッチです。

大会運営の感想

 競技の結果としては全クラス問題なく成立。優勝設定としていた35分も樹さんが38分とテーパリングしてはったら超えてきそうないい感じのタイムで終結。何人か足を挫いた方と一名の骨折者を出してしまいましたが命に別状のある怪我や遭難者等はなく運営を終えることができました。

 多少のゴツさには目を瞑っていただいて、注力したコースの回しや「見せない」ポスト位置に関しては概ね好評で波賀でできる最大限に楽しいオリエンテーリングを堪能していただけたようで本当に良かったです。

 全体の仕事の流れに関してはもう前述の通りですので控えるとして、まとめると「大変だったが楽しかった」。これに尽きます。

 間違いなく仕事量としては超膨大なものでしたし準備を始めた当初は意気揚々としてこそいたものの正直本当に大会として開催にこぎつけられるのか不安がなかったかといえば嘘になります。しかし、覚悟を持って尽力した結果このような大会に仕上げることができた達成感は一入と言うに他なりません。

 当日遠路はるばる兵庫県の山中に集まってくださった多くの競技者、備品やOCADあるいは作図ノウハウなど多大なご助力を賜った阪神奈やOLP兵庫および関係各所の皆様、さらに快くテレインをご提供していただいたフォレストステーション波賀と大会運営に参加してくれた欠かすことの出来ない神大OLKの仲間たちに、改めて心からの感謝を申し上げたいと思います。

次の運営へ…

 運営が終わったら何が始まるのか?そう、次の運営ですね。

 当日の告知の際にはもう半数以上の競技者が帰ってしまっていたので直接お披露目できた方は少なかったですが、来る2026年3月第3週(20〜22日)の週末に瀬戸内海に浮かぶ小豆島にて次なる大会の開催に向けて着々と準備が進んでいます。

 一通りの調査を終えた感想は高い難易度を実現しつつもググッと走れる「神テレイン」と言って差し支えありません。年度末ということで多忙な方も多いかと思いますが、来ないと後悔するテレインです。後悔させます。

 開催形態はフォレスト2日間とロゲイニング1日。小豆島の森も街もその魅力を余すことなく堪能できる3日間をお届けできるよう邁進しておりますのでぜひ!3月末は小豆島にお越しくださいませ。

 それではここらへんで👋

コメント

タイトルとURLをコピーしました