【短編】クレフェス運営と渉外問題未遂 caused by …(何とかなったパターン)

オリエンテーリング

はじめに

 はい、短編です。先日のKobe trailの話が予想外に炎上してしまって困惑していますが、クレフェス2022で何があったのか軽くお話ししようと思います。

 とは言っても、2年以上前でかつ私も一年生でしたので直接動いたというわけでは無いのであまりの詳細については悪しからず。

 運営のスタンスとして「みせしめ」になってはいけない、という判断が下されたため特定につながる情報の表記は控えています。

クレフェスとは(crazy festival)

 crazy festival、縮めてクレフェス。それは不思議な不思議な大会…とおふざけは程々にして、クレフェスとは希望ヶ丘で開催されるちょっと頭のネジが飛んでしまったかのような過酷なレースをするオリエンテーリングの大会を指します。

 第1回は2016年に開催され、それを踏襲する形で第2回が2022年に開催されたのでした。この記事では自分が運営に関わった第2回についてのゴタゴタを紹介しようと思います

第2回 crazy festival

阪神奈クオリティ運営

 覚えておいでの方もいらっしゃるのではないでしょうか。「設置が〜できていないので〜スタートを〜30分遅らせます〜」「フィニッシュ閉鎖は〜延長しません〜」という当日、大会会場での告知を。

 まずですね、ほぼ全ての備品を積んだ廃車が1時間ほど集合時刻に遅刻。もうこの時点で先行き不透明すぎてワロタ。これは前日の情報伝達時に集合時刻が早まったことの確認が漏れていたためでした。

 備品が到着次第全力で設置をするものの、希望ヶ丘の強烈な地形と藪にボコボコにされ結果スタート遅延となりました。なお自分も設置ミスしてたのを偶然発見され一命をとりとめたので何も言えません(笑)

 スタートしてからは自分は走る救護所としてテレインの中を徘徊し時には給水したり、時には写真を撮ったりとそれなりにうろちょろし(6時間)大会は終了しました。

 が、まず問題になったのが「撤収、帰ってこない件」。最初は遅いな〜くらいのノリでしたが季節は晩秋、みるみるうちに暗くなる森。さすがにヤバいとなって一部人員で未帰還の運営者を救出することとなったのです。

 幸いな事に無事救出されましたがポストは一つ回収できず。その代わり森で誰かが落としたEカードを拾ったり…して、後日残っていたポストも回収完了となりました。

やばいコースのはずが…

 コースプランナー渾身のコースだったのですが、残念ながら結構な不評でした。何故かって…?それはだな…普通に良コースだったからだよ!

 最初はコントロール円をC字に白塗りするとかしてたんですが、流石に安全上やばいという事で地図の隠し方を隠す写真でマイルドにすることに。その結果、希望ヶ丘を堪能できるロングコースとなったのでした。

 普通の大会なら万々歳だったのですが、頭のネジぶっ飛んだイカれ競技者の皆様はもっとイカれたコースがご所望だったようで、コースの良さを褒めつつもちょっと物足りなさそうにしていたのでした。

事件発生

目を疑ったツイート

 運営の熱も冷めた12月12日、とあるトレイルランナーのツイートが一人の運営者によって運営グルに貼られたのが騒動の始まりでした。

 文面を見るにこれウチらが開催したcrazy festivalの話じゃないか…一見普通のオリエンティアかと思いましたがポストの撤収後とある…どういうことだ…

 そんな矢先に別の答え合わせツイートが発見されました。ルート図が投稿されていたのです。

 あっ…察し。これは「ま・ず・い」なとなりました。

 一見何の問題もないんじゃないか、と思われる方がいるとまずいので2点重大な問題についてお伝えしておきましょう。

  1. テレインに無断で侵入していること
  2. 地図を無断で使用していること

 この二つが挙げられます。順に何が問題なのか見ていきましょう。

テレインへの無断侵入

 言うまでもなくまずいです。オリエンテーリングのテレインというものは地権者との綿密な渉外活動を経た上で使用の許可をいただいています。当然、この許可を取るにあたって大会の要旨や規模、参加人数や環境負荷など様々な観点について打ち合わせを行なっています。

 これを経て「この日にオリエンテーリングをすることを許可します」とお達しが出ることから、参加者は大会の開催日以外にテレインに入ることを許可されていません。運営者であれば準備や片付けで例外もあるでしょうけども。

 このツイートを発見した時点で大会の開催から3週間が経過していました。そこで「希望ヶ丘側はこの情報(オリエンテーリング目的で開催日以外に侵入者がいること)を掴んでいるのではないか」という疑問がわきます。

 仮にそうだった場合、なんか来てる人いるみたいなんだけど?不法侵入だけどどうなってんの?説明して?となりかねません。結果、希望ヶ丘が使えなくなるとなれば「渉外問題事例集」のマウンテンバイク事件と並ぶ重大事案として掲載されることとなります。

地図の無断使用

 2点目として地図の無断使用があります。オリエンテーリングで用いる地図は地理院地図のように無料のデータベースからポッと出力して出来上がるような簡単なものではありません。

 時にはプロが、時には運営者が、時には熱意あるガキが、手間暇かけて一から森の中を歩いて回り等高線から薮、水系から岩まで徹底的に調査し作り上げていくものです。一枚の地図に50〜100万円というお金がかかることは普通です。

 それだけ多大なる労力をかけた地図には著作権が生じます。立派な著作物となるわけです。その著作物を使用するにあたって大会の主催者は版権者に対して定められた料金を支払うことで許可されます。

 オリエンテーリングという界隈は善意で回っておりますのでこの地図使用に関して、極めて厳密に定義されることは少なく参加者に提供した分だけで良いよ、運営に使った分は計上しないでええでと言ってくださることもしばしばです。

 しかし、これはあくまで善意によって成り立っているものです。誰も彼もが自分勝手に地図を印刷しコースを組み走るとなればそれはまずいのです。

事案を受けて

 運営はこの事案を受けてテレインへの無断侵入と地図の無断使用は問題であり渉外問題につながる可能性がある事を伝手経由で伝達しました。

 結果としてこれ以上問題になることはなくほとぼりが冷めて済んだ…となりましたが本当に危なかった。地図に関しては…ちょっと情報が残っていなかったので不明です。滋賀県協会が版権元なので笑って許してくれそうな気はしますね。

偶然何とかなった

渉外問題は意外とすぐそこにある

 オリエンティアなら誰もが一度は読んだことのある「渉外問題事例集」。読んだことのない方はぜひ一読しておくことをおすすめいたします。ここに乗っている理由の多くは些細な事が原因となっています。そしてもちろん、ここにあるものが全てではありません。

 公開されていて最も有名なものをあげるとすれば2010年の嶽山インカレで発生した地権者とのトラブルでしょうか。入念に入念を重ねた地権者との交渉の末、土壇場でインカレの中止を余儀なくされるという結末でした。

 今回のクレフェスの件も一歩間違えていれば似たような運命をたどっていたかもしれません。そのような非常に不安定で、地権者との信頼関係の上に成り立っている競技だからこそ渉外問題に対してより一層慎重になる必要があるのです。

チャンスは一度

無責任な意見もある

 何でそんな保守的なん?と言われます。もっと頭柔軟にしていろんなやつ受け入れていけよ〜って

 オリエンテーリングとはまず地権者との信頼関係が大事です。どんな大会でも最初に行うことは渉外、その森を使わせて頂けるか、競技の内容を理解して賛同して頂けるかが重要です。

 つまり地権者を裏切るようなことをしてしまえば(運営・競技者問わず)見限られテレインは消えていきます。

 オリエンテーリングにはオリエンテーリングのルールがあります。そのルールや規則に則って行われるから公正であると言えるし、そもそも競技会を開催することが出来ているのです。

だから保守的にならざるを得ないのです。

フリーライダー問題

 いわゆる界隈の外からの者を受け入れる事によるコストを山屋は背負いません。何故ならその行為は誰か(行政や私有)の土地にできた山道を勝手に通行する事だから。各々が勝手にやって誰も責任を負うことはありません。

 言い換えれば既存のもの(誰かが切り開いた道や道路)へのフリーライダー。登山者の多くが登山道の整備や開拓を行なっていないのがそれを裏付けています。それを悪いとは言ってません。事実を述べているまでです。

 一方オリエンテーリングはそのテレインを運用するにあたって、地権者に許可を取り責任を持ってそのテレインと地図を管理しています。ここが決定的な違いです。

 私たちテレイン管理者は常に競技者が生み出す不確実な結果の責任を背負っているのです。

 であるからして、競技者も運営者も無責任であってはいけないということはよく分かるでしょう。「縄張り」と評されるオリエンテーリング社会は先人達が弛まぬ努力で形成したもの、そこにはあらゆる「責任」がつきものなんです。

知らないことは仕方がない、でも知らなかったでは済まされない

 「知らない」ことは仕方がありません。オリエンテーリングがいかにシビアな信頼関係の上に成り立っているか、どれだけの労力と身を削る努力が成果を生み出しているのか。どれだけ厳密なルールが存在するのか、知らないことには仕方がありません。

 しかし一度渉外問題が発生し地権者の許可が得られなくなればそのテレインは半永久的に閉ざされることとなります。残るのはそのテレインを渇望する人たちからの失望と、虚空に消え去ったマッパーや運営者の努力。この責任を当人が負うことはありません。

 見えないところにある様々な人の努力が縁の下の支えとなって脆いオリエンテーリングという競技の地盤を支えます。彼らが取り払うべきと思っている垣根は、実は世界を支える大切な柱なのです。

 件の競技者も「あいつらの界隈ぶっ壊してやろうぜ」と思っていたわけではきっとないでしょう。そう信じてはいます。

「競技である」ことを周知する必要性

排斥したいわけじゃない、わかってほしい

 一貫して申し上げていますが、なにもオリエンテーリングをやって欲しくないだなんて思っていません。オリエンティアが増えるのは何より素晴らしいこと、もっともっと参加してほしい。

 トレランを楽しめる方ならオリエンテーリングで走る環境だってきっと楽しいはずなんです。一面見通しの良い杉林、爽快な尾根降り、ゴリゴリの急登。どれもこれもトレランと似ていて非なるものだからこそ非日常で面白いし参加する魅力があります。

 加えてナビゲーション!決まっていないコースを走る走るから全責任は自分に、これこそ究極の自己責任ですよ。現ロスなんて当たり前だしぶっ飛んでいって遭難した選手もいるくらい(やめてね〜)

 しかし、ここはトレイルランの大会ではないのです。オリエンテーリングの大会なのです。それに参加するのであればオリエンテーリングの競技規則を遵守しルールを守る必要があります。

「知らない」を「知ってる」に

 どれだけ下手な大学1年生入りたての子でも知っていることがあります。それはルールに従う必要があること。そしてそのルールによると好き勝手にオリエンテーリングをしてはいけないということ。

 これは入部した直後に行われる「マナー講習プログラム」によって全入部者に周知されます。例外はありません。オリエンがシビアな環境で行われていることをみな重々承知しているのでこのようなプログラム教育を行なっているのです。

 しかしこの教育法ではプログラムを受けることのないランからの流入者に対応することができません。そうなるとこのクレフェスのような問題が再発するのも時間の問題でしょう。

 上の画像は第5回神大大会のプログラム抜粋です。このように明確に強調表記する形式をとりました。が必ずしも読むとは言えないのでもっと地図上に明記する必要すらあるかもしれません。

 何かしらの形で周知する。何なら全部の大会の要項のトップページに記載しても良いくらいです。とにかく目につく機会を増やすことが周知の鍵だと考えています。

 あるいは私が発信するか。炎上するけど(笑)

根本的に「競技」である

 また、改めてオリエンテーリングが登山やハイキング、トレイルランニングといった無許可・無責任な環境で行われるレクリエーションではなく、厳密なルールや手続きを踏まえた上で行われる「競技」であることも併せて周知する必要があります。

 当然、その中にも「厳密に競技的」な大会もあれば「レクリエーショナル」な大会もあるでしょう。しかしその全てに共通して言えることは「根本的に競技である」ということです。再三になりますが、だからこそ競技者は競技規則に従いルールを遵守する必要があるのです。

 競技性に拘る時点でナンセンス、という言説がありましたがそれはオリエンテーリングそのものの否定です。拘るも何も競技であることはオリエンテーリングである限り当然のことであり、ただそうあるべきものでしかないのです。

 価値判断は置いておいてこの認識が浸透しない事には、またレクリエーションの一環であると勘違いした競技者が渉外問題のトリガーに手をかけることとなります。

周知するべきは…

 以下の3点でしょう。

  • テレインへの無断侵入が禁止されていること
  • 地図の無断使用が禁止されていること
  • オリエンテーリングは「競技である」ということ

 少なくともこの3点、この3点さえ理解して受容さえしてくれれば十分と言えるのではないでしょうか。

おわりに

 何でお前はそんな過敏なんだと聞かれますが、こういう運営でのトラブル経験があったのです。これにより私は完全なる「トレラン・アンチ」へと変貌したのでした。怪異ですね、祓わなきゃ。

 今、私はあるテレインの地図及びテレイン渉外の管理者となりましたが、いつもこの渉外問題の可能性を危惧して少し心配になります。

 再三ですが、別に私は排斥者ではありません。フリーライダーの目にはそのように捉えられるのかもしれませんが、根本的にオリエンテーリングの大会を開催するにあたって必要な責任を負っているからそう見えるのです。

 いずれにせよ、継続的に周知を行うことは正しい理解を深めるだけでなく不意な渉外問題の発生を防止するという意味でも大きな役割を果たすと考えます。

 皆が皆、私のようなイかれた行動をすることはないと思いますが、少しでも周知活動が広まってくれると嬉しいなと申し上げてこの記事を締めくくります。 

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